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遺産について

   遺産の調査方法

被相続人が遺言を残している可能性があるので、まず、公正証書遺言の存否を調査します。
全国どこの公証人役場でも、必要書類をそろえれば、遺言を検索してくれます。

  • 不動産

    遺産となる不動産の地番、家屋番号が分かっている場合には、法務局で登記簿謄本を取り寄せることができます。
    住居表示しか分からない場合は、法務局備え付けのブルーマップ等で地番を特定する必要があります。
    地番が分からない場合は、不動産があると思われる市区町村の資産税課に名寄帳の申請をします。
    遺産のみならず、以前に被相続人が所有していた不動産も特別受益の検討のため、不動産登記簿の取り寄せが必要です。

  • 預貯金

    金融機関から残高証明書、取引明細書を取り寄せます。
    不明であれば、預貯金があることが予想される金融機関の支店に残高証明書の交付を請求します。

  • 株式

    証券会社に預託していることが多いので、証券会社に照会します。

   遺産の範囲

【預貯金・不動産等の積極財産】

  • @ 金銭債権

    金銭債権は、分割債権であり、相続開始とともに当然に分割されるとするのが、判例の立場です。とすると、相続分については、個別に支払いを受けることができることになりますが、銀行からは相続人全員の印鑑を要求されることが殆どです。
    また、当然に分割されるという考え方からは論理的ではないのですが、遺産分割手続の対象として扱われるのが実務の運用ですので、遺産の範囲として遺産分割調停または審判で扱われるのが通常です。

  • A 賃借権

    賃借権も財産権としての価値があり、当然に遺産の範囲となります。
    なお、遺産分割とは直接関係がありませんが、内縁の妻等の同居人も相続人の取得した借家権を援用して継続して居住することができるとするのが裁判所の立場です。

  • B 生命保険金

    生命保険金については、受取人が指定されているもので、受取人固有の権利となります。したがって、遺産分割の対象とはなりません。受取人が相続人と指定されている場合は、事実上、相続人が受け取ることになりますが、遺産の範囲ではないとするのが裁判例です。ただし、生命保険金は、特別受益として、持ち戻しの対象であるとする審判例もありますので、注意が必要です。

  • C 損害賠償請求権

    相続開始時に発生している損害賠償請求権は当然に相続の対象となります。慰謝料請求権についても相続の対象となります。 妻として、または子としての慰謝料請求権は、個別の請求権ですので、遺産ではありません。

  • D 退職金

    退職金のうち、あらかじめ受給権者が定まっている場合は、受給権者固有の権利となり、遺産には含まれません。
    受給権者が定まっていない場合で、かつ理事会等で受給者が決定された場合は、受給者固有の権利とする判例があります。
    理事会等で受給者も決定されない場合は、
    (1)生計をともにしていた遺族固有の権利とする説と(2)遺産として相続人が取得するべきとする説があります。
    なお、既に退職金を取得している場合は、預貯金等として、遺産に含まれることになります。
    また、特別受益として持ち戻しが認められるかについては、これを認める審判例と認めない審判例があります。

  • E 遺族年金

    遺族年金は、受給権者固有の財産となりますので、遺産には含まれません。
    特別受益として持ち戻しが認められるかも問題となりますが、遺族の生活保障という意味合いが強いため、これは認めるべきではないとする説が有力です。

【借金、保証債務等の消極財産】

  • @ 金銭債務

    金銭債務については、遺産分割を行うことなく、相続分に応じて各相続人が承継することになります。
    したがって、遺産分割の対象とはなりません。なお、相続放棄したものは相続人とはなりませんので、債務を引き継ぐことはありません。

  • A 保証債務

    保証債務も金銭債務と同様に相続人に承継するとされます。
    ただし、身元保証契約や責任限度額と保証期間の定めがない保証債務については、相続されないとする 見解が有力です。
    もっとも、相続時に具体的に発生している保証債務については、相続の対象となります。

【遺産からの収益】

◆利息・賃料
利息や賃料については、当事者間の合意がある場合に限り、遺産分割の対象となるとする説が有力です。
合意が得られない場合には、共有物分割の手続(合意できない場合は訴訟を提起することになります)によります。

   遺産の評価

  • @ 遺産の評価時期

    遺産分割時に評価するのが実務の運用となっています。

  • A 評価方法

    ◆不動産→最終的には不動産鑑定士の評価によることになります。
    もっとも、費用がかかることから、特に調停で合意できる場合は、家庭裁判所調査官の調査、路線価、不動産業者の意見等により評価することもあります。
    ◆株式→上場会社は取引価格があるので、これによることとなります。上場会社でない場合は、最終的には裁判所が選任する鑑定人の意見が大きく影響することとなります。評価方法としては、大きく、純資産方式、収益還元方式、配当還元方式、類似業種比較方式等がありますが、いずれも専門的ですので、専門家に相談する必要があるでしょう。

  • B なお、特別受益の価額の評価時は、相続開始時とするのが実務の運用です。

弁護士法人英明法律事務所岸和田事務所の法律相談について

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