再生手法の選択
中小企業法務研究会 事業再生部会 弁護士 福田 大輔 (2014.03)
1 経営実態の把握
〜経営が悪化している会社では、融資を受けるため、実態と異なる経理を行っていることがあります。そこで、経営実態の把握が手続選択の第一歩となります。
決算書からの修正
決算書の内容が事実と異なっていないかを確認します。その際特に、
- @ 売上の架空計上(売掛金の増加)
- A 売上の計上時期
- B 在庫の水増し処理
- C 代表者からの借り入れ
などに注意します。
2 基準@ 〜破産か再生か
ア 負債を返済しなかったら、キャッシュが回るか イ 社長の気持ちが切れていないか
ア 負債を返済しなくても、損金が売上を上回り、かつキャッシュが回らなければ事業を継続することはできません。そこで、負債を返済せずにキャッシュが回るか否かが最初の基準になります。その際、次の点に注意します。
- @ 減価償却・役員報酬は、事業資金に充当できる可能性があること。
- A 経費、特に人件費・賃料の削減は可能か。
- B 売り上げの改善見込はあるか。
イ 以上を満たしても、そもそも社長の気持ちが切れていれば、再生は困難です。
3 基準A 〜リスケか、任意整理か、民事再生か
ア リスケ 〜利息の支払いは可能か
利息の支払が可能であれば、リスケ(金融機関個別に元金の全部または一部の支払いを一定期間、猶予してもらうこと)を検討します。その際、税金の支払(繰越損があれば、法人税は均等割部分だけとなる可能性があります)、運転資金が確保できているか(サイトの変更は可能か等)に留意します。なお、経営革新等支援機関の経営改善計画策定支援事業(助成金)の利用や、経営者保証に関するガイドラインの利用等も検討します。
イ 任意整理
利息の支払いが不可能または過大である場合は、支払をいったんストップし、元金のカット及び支払方法について、協議する任意整理を行うことになります。この際、保証協会付債務は代位弁済された後、保証協会と協議します。保証協会は、支払額を低額にすることは可能ですが、元金のカットは困難です(日本政策金融公庫も同様)。プロパー債務については、元金のカットもあり得ます が、債権回収会社に売却された場合と比べると、カット率はさほど大きくできません。債権回収会社に売却された場合は、大幅な元金のカットも検討可能です。
ウ 民事再生
金融機関との任意の交渉が困難である場合、民事再生を検討します。この場合、
- @ 手続費用が高額となること(したがって、小規模業者は困難)
- A 当面の運転資金が必要となること
(買掛先等も一律に対象となるため、掛取引が困難なため) - B 保証協会・日本政策金融公庫等は再生計画に賛成しないこと
- C 税務対策が必要なこと(多額の免除益が発生しうること)
などに注意する必要があります。